「歯科医師の仕事って?」
「歯科医師について詳しく知りたい!」
このような方に向けてこの記事では、歯科医師資格を保有し、実務経験のある私が歯科医師資格や仕事内容、就職先などの歯科医師全般について解説していきます!
石田友理
東京都在住。私立歯科大学を卒業、大学病院で研修後に都内のクリニックに勤務。子供からお年寄りまで幅広い年齢層に対して虫歯や歯周病治療に加え、入れ歯治療などの一般歯科治療に3年ほど従事。結婚を機に退職、歯科医師としての経験を活かして、歯科医師のキャリアを中心にライティング・監修を行う。【保有資格】歯科医師免許
飯田このみ
東京都在住。国立大学歯学部を卒業後、大学病院口腔外科にて研修し都内のクリニックに勤務。一般歯科をはじめ、審美歯科、インプラント治療、矯正治療、小児歯科など、子どもからお年寄りまで多岐にわたる治療を行う。出産後は1年の育児休暇を経て臨床現場に復帰し、子育てと両立しながら勤務している。子育てを機に転職の経験があり、自らの経験が女性のキャリア形成や働き方の参考になればと思い、勤務医として働きながらライターとしても活動。【保有資格】歯科医師免許、日本口腔インプラント学会専修医、インビザラインGoシステムライセンス
歯科医師とは?
歯科医師とは、むし歯や歯のまわりの病気を治療するとともに予防指導にあたる歯や口腔内全体を診る専門医師で、具体的な仕事内容としては、むし歯の処置や入れ歯・詰め物・冠・差し歯などの製作と装着、歯並びの矯正、抜歯やインプラントの外科的治療など口腔内全体のおけるトラブル全般の治療や予防を行います。また、行政機関で公衆衛生に携わったり高齢者施設への訪問診療や企業・学校での歯科検診など多岐にわたります。
尚、歯の失われた機能を代わりの物で補填すること、すなわち補綴・充填・修復物の装着をすることは歯科医師のみに許されている業務内容です。
■歯科医師法 第一章 総則
第一条 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。(引用:厚生労働省)
■歯科医師の法的定義(歯科医学大事典 1989)
厚生大臣の免許(歯科医師免許)を取得して歯科医業を行う者(行うことの出来る者も含む)であり、歯科医療及び保健指導をつかさどることにより、公衆衛生の向上・増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する任務を担っている者である。(引用:日本歯科医師会公式サイト)
歯科医師免許・資格・試験とは?
歯科医師法にあるように、歯科医師になるためには歯科医師国家資格に合格する必要があります。高校を卒業後、大学の歯学部もしくは歯科大学(いずれも6年制)にて学び、卒業することで、国家試験の受験資格を得ることができます。その歯科医師国家試験に合格した上で、診療に従事するには、原則として研修施設の指定を受けた病院・診療所で一年以上の歯科医師臨床研修を修了する必要があります。
歯科医師国家試験は年に1回、例年1月下旬から遅くとも2月上旬に実施され、合格発表は3月中旬です。試験地は北海道、宮城県、東京都、新潟県、愛知県、大阪府、広島県及び福岡県の大学や会議場で行われます。
では、国家試験の難易度はどれくらいなのでしょうか。
結論から言うと、難易度は高めです。2023年の合格率は下記の通りです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
新卒者 | 1,919人 | 1,483人 | 77.3% |
全 体 | 3,157人 | 2,006人 | 63.5% |
大学の卒業試験を突破した新卒の受験者でも合格率は80%もいきません。既卒者を含め全体では毎年大体3000人ほどが受験し、2000人前後が合格します。合格率はその年の難易度や4年に一度の改変にもよりますが、およそ60%代で推移しています。年々国家試験は難化していて合格者数を絞っています。これは近年の歯科医師過剰に伴い、歯科医師の数を減らすためと言われていて試験内容もタクソノミーの高い問題が多いからです。
タクソノミーとは、ある問題を解くのに解答者が何回自分の頭で考えることが必要かを1~3段階で分類したものです。段階が上がるにつれ難しくなります。国家試験の出題基準の一文に記載があります。
近年の診療参加型臨床実習の充実による成果をより適切に評価できるよう、タクソノミーの高い出題を一層推進して
いく
将来やりたい科目が決まっていたとしても基礎科目から苦手な科目まで、勉強科目は膨大なため遅くとも半年前から始めないと難しいでしょう。
歯科医師 石田友理さんの体験談
私がうけた当時はこれだけもっていけば大丈夫なまとめノートを作ったり、午前は暗記科目を多めにしたり過去問は何月までにやり、間違えた問題は時間を空けて解いたりとにかくスケジュール管理をしながらやっていました。試験内容の必修問題は簡単なものが多い一方で、臨床問題は実際に治療をイメージしながら解かないといけないのでパターン化だけして覚えていると答えられないこともあります。また臨床問題はほかの問題より点数配分が高いので見直しの時間も多く取る必要があります。
歯科医師と歯科衛生士の違い
歯科医師、歯科衛生士はともに国家資格ではありますが業務内容に違いがあります。
歯科医師の業務は前述のとおり歯に関する治療行為のほとんどができ、歯に関する薬の処方や口腔内の手術も行えます。 その一方で歯科衛生士の業務は「歯科疾患の予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」の3つの業務が歯科衛生法で定められています。
歯科疾患の予防処置では歯周病やむし歯などの疾患予防のために、フッ化物塗布をしたり歯石を除去し口腔内を清潔に保つ処置を行います。歯科診療補助とは歯科医師が行う診療・治療が円滑にできるよう必要な器具の受け渡しや片付けなどのサポートを行います。歯科保健指導は人々が自身で歯のセルフケアができるように、ブラッシング方法や食生活指導を行い、介護施設では寝たきりの方に口腔ケアを行うこともあります。学校や施設に訪問して直接指導が可能なため、あらゆる場所で行えます。
歯科医師が活躍する職場と仕事内容4選
次は、歯科医師が活躍する場所と仕事内容について解説していきます。
歯科医師が活躍する職場1:歯科医院
後述で開業医について説明しているのでここでは勤務医としての場合を解説していきます。歯科医院(デンタルクリニック)はいわゆる「町の歯医者さん」でイメージする方が多いのではないでしょうか。歯科医師のおよそ85%が働く代表的な就職先です。小児歯科や矯正歯科、歯科口腔外科など専門性に特化した医院もあり、最近では正式な診療科目ではありませんが、審美歯科と呼ばれる見た目を美しくする形態のクリニックもあります。
業務はむし歯治療や歯周病治療、定期健診を行います。勤務している医院が掲げている理念に基づいて治療にあたり、院長のほかにも歯科衛生士や歯科助手などのコデンタルスタッフともコミュニケーションをとりながら業務を行います。
歯科医師 石田友理さんの体験談
私の場合は一回国家試験に落ちているのですが、先に歯科医院に就職をしている同期の仲間に就職のポイントを聞いたりして求人サイトで何件か見学をして就職に至りました。 臨床経験も浅かったので研修制度がありマンツーマン指導をしてくれるところ、院内の雰囲気はどうか?患者さんの予約時間などに無理はないかを重要視していました。面接等でいろいろ聞いていたので入社前と入社後で特にギャップなどは大きくありませんでした。
研修カリキュラムを終えたのち実際の診療ではできることから経験しきちんとフィードバックをもらえたのが良かった点です。大変だったのは長期休暇の前後で予約以外の急患の方がドッと増えた日はかなり忙しくなるところですね。
歯科医師が活躍する職場2:病院
大学付属病院で勤務することが多く、専門性を高めたい人がそのまま残ることもあり大学院生として研究しながら診療を行う歯科医師もいます。
病院では口腔がんなど一般の歯科医院では治療が困難な症例を多く扱うほか、他の科と連携しながら治療に携わることができます。
歯科医師が活躍する職場3:保健所・公務員
行政機関で働く歯科医師は、目の前の患者さんを治療するというより日本国民の保健医療に関わる制度づくりや都道府県や市役所・保健所で地域住民の口腔健康維持、増進に携わっています。また、自衛隊歯科医官として隊員の歯科診療や検診災害時の復興や国際協力に従事します。
歯科医師が活躍する職場4:開業
歯科医師は将来的に開業をすることがとても多いです。勤務医のときは医院の理念に従って治療を行いますが、開業医では自分が理想とする歯科診療ができます。そのほかでは、年収を増やしたい場合や親族がすでに経営していて継承するパターンもあります。
技術や知識を高めるために、休日に勉強会やセミナーに参加したりするのはもちろん開業医になると治療以外にもスタッフの管理などの経営にも力を注がなくてはいけません。
歯科医師の仕事の1日の流れ
歯科医院の勤務医としての1日の流れについて解説します。
【9:00~】出勤
朝の清掃、準備、その日に予約のある患者さんのカルテチェック。
【9:20~】朝礼
予約状況や注意事項をスタッフ全員と共有。
【9:30~】午前の診療開始
基本的には予約の患者さん優先で診療していきますが痛みのある急患の方も対応します。予約時間としては30分枠、患者さんの症例によって45分や60分などで行います。
【13:00~】昼休憩
持参したお弁当や周辺に飲食店があれば食べにいく人もいます。
【14:30~】午後の診療開始
業務内容は午前と変わらずですが、時間帯によって来院する患者さんが異なり、学生や仕事帰りの方などが多くなります。
【19:30~】終礼
後片付けを終えて、その日に起きたことの振り返り、申し送りや情報共有をします。
歯科医院によって診療開始時間が遅かったり、夜遅くまで診療している医院の場合は上記と異なります。また診療後に自己研鑽を行う場合もあります。
歯科医師 / 飯田このみさんの1日の流れへのコメント・体験談
私が勤務している歯科医院も、朝の準備や朝礼、1日の流れ、休憩時間は同じような感じです。だいたい同じような流れの医院が多いのかなというイメージなのですが、医院によってはもっと診療時間が長かったり、お昼休憩が短かったりもします。ですので月給や日給でお給料が提示されているときは、時給換算して比較してみるといいかもしれませんね。
朝の診療時間前や、夜の診療時間後に定期的に勉強会や症例報告会がある医院もあり、自分の経験していない症例を教えてもらったり治療計画を相談できる場が設けられていたりもします。診療とはまた別の自己研鑽の場として、上手に参加していくと良いと思います。また、診療時間が長い医院での勤務を考えている場合は、1日に診療する患者さんの数も把握して、ご自身の体力と相談も必要かもしれません。地域差がありますが、患者さん一人につき何分の枠で診療できるのか、歯科医師一人につき何台のユニットで診療するのか、診療についてくれるアシスタントの数などでも変わってきます。ちなみにわたしの場合は、子育て中なので夕方に退勤させてもらっています。勤務医でもある程度ライフスタイルに合わせた働き方ができるのは、歯科医師の強みではないでしょうか。
歯科医師になりたい方、働きたい方へ
歯科医師は治療することで、前より美味しくご飯が食べられるようになった、楽しく会話ができるようになったなど直接患者さんに感謝されるおおきなやりがいのある仕事です。
自分次第で年収もあげることができ、専門性に特化すればさらに幅が広がるのはもちろん、子どもの食育や高齢者の口腔ケアに仕事内容は多岐にわたるので女性の歯科医師も活躍しやすくなっています。
資格自体は国家資格なので取ることができれば、一生ものです。 細かい作業が苦ではない人、人と関わるのが好きな人、医療に関わり人の役に立ちたい人。このような方におすすめです。